
みなさんこんにちは
今日は老後資金を支える
年金財政についてお話しします。
ロシアのウクライナ侵攻
あるいはそれをサポートする中国、
これの地政学リスクによって世界経済は大きく影響を受けております。
また、感染症・コロナの影響が3年余りにわたり財政がかなり危機的な状況になりつつあります。
これらの影響で私たちの生活も激変しました。
出生率。子供が何人生まれるか、ですが
激減しております。
これらはすべて、私たちの大事な老後を支える老後資金に大きな影響があります。
実は公的年金、厚生年金と国民年金は、5年に1回、財政検証ということで、年金の財政が健全かどうかのチェックを行います。
最近では2019年のレポートが2015年の国勢調査に基づく人口に基づいて行っています。
その出生率を見てください
1.45でした。
1人の女性が生涯に産む子供の数が1.45人ということでございます
これがこの5年間で2020年の数字1.34になっています。
2021年の数字は発表されてませんが子供の数自体は減っておりますのでさらに下がってくると見ています。
一方、平均寿命、平均して何年生きるかということです男性は80.75が81.64で、1歳増えています。
女性は86.3が87.74ですので約1.5年増えております。
数字だけ見てもよくわからないですね。
解説します。
出生率、子供の数が1.45から1.34ということは子どもの数が8%減るということです。
子供というのは将来私たちの年金を支える働き手の数に影響いたします。
働き手の数が8%減るということを、長期的に見ればそういうことになります。
そうなると働き手の数が減りますので、年金の額も同じように8%を減らさないといけない。
いうことになります。
平均寿命が長くなることはそれ自体はおめでたいことなんですが、年金財政から見ますと
逆の方向になります。
私たちは年金を65歳から受給してます。
平均寿命は80.75なら、平均すると 80.75ー65 で
15.75回、年金を受け取るということになります。
それが81.64ですと16.64回、約1回分、1年分の年金が多くて出ていくということになります。
財源は変わりませんので、年金額を6%、約6%減らさないといけない。
ということになります。
そうしますと、出生率の影響の8%、平均寿命の影響6パーセントを合計すると、
このわずか5年間で14%年金財政が悪くなったということになります。
出生率1.34についてさらに詳しく説明いたします。
夫婦二人で子供が1.34という事です。約7割ということになります
2人が1.34ですから7割ですね。
そうなると一つの世代、約30年ということになりますので1世代で30年で、
人口が約7割になる。
ということになります。
1世代で7割、2世代の60年になるとさらに
7割かける7割で49%、
約半分になるということになります。
さらにもう1世代、90年になりますと
さらに7割になりますので34%
いうことになります
約90年で人口は3分の1に減るということです。
経済について、大変、大きなインパクトがあることがおわかりになると思います。
では60年で半分になる人口の経済への影響を詳しく見てみましょう。
まず人口が半減するということは、国内マーケットは基本的に半分になります。
消費量が半分になります。マーケットが半分になると
一部の企業マーケットは別にしまして基本的には、全部半分になるということです。
ですから(国内消費による)GDPも半分になります。
これを補うためには海外で稼ぐ必要があります。
最近日本企業は苦戦しているというふうに言われております。
また輸出で稼いでも、これからは、サービス化経済ですので、
海外で稼いだ利益を国内の従業員に給料として払ってくれるか?
大きな疑問があります。
ですから国内マーケットが半減すると同じように一生懸命働いてても、
生産性は半分になります。
そうなると経営者としては賃金を減らすのが、合理的な行動になります。
あるいは人数を減らす、ということになります。
そうなると、
一人一人の収入がさらに減り、さらに経済の規模が小さくなるという
いわゆる負の循環が始まるいうことになります。
豊かな人と貧しい人の二極化が進んでいく。
というのが想像できます。
そうなってくると、税金を払う人は少なくなります。
豊かな人は節税対策もする。
財政破綻は、なかなか避け難い状況になります。
こういうような負の連鎖が、人口減少の社会では
起きやすいということであります。
それではこれらの経済の悪化が、年金財政にどのような影響があるか?
解説いたします。
年金財政は皆さんの払う保険料、そしてGPIFの運用収益国からの補助
元は皆さんの税金ですが、これが収入項目。
出て行く方は給付、年金給付ですね
これらを決定する要因としましては、保険料は先ほど説明しましたように出生率の影響が大きいです。
そして実質賃金上昇率。
物価の影響を除いた実質賃金上昇率というのも大きく影響してきます。
運用益はリスクを取らないと基本的にはリターンがありませんので、
リスクをとってどれだけ投資するかということになります。
当然リスクは伴いますので失敗したときは、大きなインパクトがある。
リスクを抑えないといけない。その中でいかにかに稼ぐか?
というのが運用です。
給付については、物価が上がれば基本的には公的年金というのは上がります。
しかしそれでは年金の財政が持ちませんのでマクロ経済スライドと、あまり
知られてないと思いますが、
物価が増えても年金の額はそれほど増やさないというファクターを組み込んでます。
現在、約1%、団塊ジュニアが引退した後はですね、だいたい2%物価が2%上がっても年金を増やさないというファクターになってきます。
もちろん経済がうまくいけばこれらは良いように回っていきます。
しかし財政政策、規制緩和、金融政策
これらの3つはアベノミクスの三本の矢と言われておりましたが、
あまりうまくいっていない。
唯一、働いていた金融政策もここのところ、ほとんど機能してない。
日銀はずっと政策を変えられずにいます。
あまり効いてないという証拠じゃないでしょうか。
ですから基本的にはコロナおよび地政学リスク、ロシアの戦争等ですね。
それによって世界経済が大きく傷んでおり日本経済もいたんでます。
それらを防ぐ方法はない、ということでございます。
さらに、地政学リスクによって物価がどんどん上がっております。
原油、小麦、直接の影響があります。
しかし、物価が上がってもマクロ経済スライドで年金の額は上がらない。
ということになりますので、私たちの老後資金はますます細っていく。
という構造になります。
それではこれらの経済的な状況をどのように組み込んで年金財政の検証は行われているか?
これらは経済前提と言われるものに組込まれます。
例えば運用利回り。2001年から2017年の実績率。
これをグラフに表している
今回の年金財政検証はケース1からケース6までの6ケースについて検証してます。
1から5については、2%から3%の利回りを見込んでおります。
case 6は一番悪いケースですが0.8%ということでございます。
実際の運用利回りはリスク資産を組み込んでいるためにマイナス10%からプラスの12%まで大きく振れております。
一番大きなマイナスのバブル崩壊のマイナスについては見込んで込いない。
例えばああいうものが、今回の地政学リスク、コロナのリスクで起こりますと、30年経っても回復しない。
当時つけた日経平均の最高値、3万9千円あまりの値は未だに、30年経っても、未だに回復しておりません。
そういう大きなリスクがあるということでございます。
ほとんどの年はうまくいきます。しかし悪くなる時もある。
そういう悪いマイナスの影響は30年以上の長期にわたって続く。
ということでございます。
次の経済前提は物価上昇率です。これについては先ほどの運用利回りは
2001年からでしたが、物価上昇率についてはなぜか1989年から想定しております。
その前提でもかなり高めの数字を置いている。
というのが分かると思います。
case 1は2.0%、日銀がターゲットインフレーション2%になってますので
あながちダメということはありませんが、
実績からは大きく外れている。それではこの物価上昇率を、
先ほどと同じように2001年から21世紀に限って見てみましょう。
21世紀に入ってからの物価上昇率はほとんどゼロかマイナス。
いわゆる物価ゼロ、という状況になっております。
これから見ると
年金財政の検証に使った想定は非常に甘いと言わざるを得ません。
なかなか姑息、と言っては
失礼に当たるかもしれませ んが、
かなり際どいテクニックを使っているということが言えると思います。
保険料の収入に大きな影響がある実質賃金上昇率であります。
これについてもなぜか1988年、バブルが形成する前からの数字を使っております。
バブルが崩壊したのは1990年からです。
それ以前の大変、史上まれにみる好調な経済を使っているということでございます。
これ見てもかなり想定は甘いと言わざるを得ません。
case 1は1.6%物価を超え1.6%です。
先ほど物価がケース1の場合は2.0%でしたら毎年賃金が3.6%上昇するという想定です。
一番悪いケースでも0.4%プラスの賃金上昇ということになります。
これを先ほどと同じように、21世紀のデータだけで見たのがこのグラフです。
2001年から2018年、21世紀ですね。
これでいきますと、財政検証の想定は大変、非現実的と言わざるを得ません。
case 1は1.6%ケース6の一番悪いケースですけどそれでも0.4%
ほとんどの年度は想定 から外れております。
賃金、日本は大変厳しい状況にあります。
これはちょっと古い数字ですが平成25年の経済財政諮問会議。
アベノミックスが始まった当初の会議で各国の比較をしております。
日本の名目賃金上昇率。青いグラフですがマイナス0.8%。
消費者物価の上昇も超えておりません。
それがマイナス0.3です。
実質賃金は どんどん下がっていってるという状況でございます。
他の普通の国はですね、賃金上昇というのは物価上昇を上回って、
しかし名目の経済成長よりは低いいうところに収まっております。
この構造を記憶してください。先ほどの構造を頭に入れて、今回の
財政検証の賃金上昇率の想定を見てみましょう。
赤色です。
運用利回りよりは低く設定されております。
しかし物価上昇率をはるかに超えている。
日本の実情と合いませんさらに問題なのは名目経済成長率
緑のグラフですが1から6まで全て上回っております。
赤の方が強いということでございます。
名目賃金上昇率の方が名目経済成長率よりも高い。
というようなことは通常の経済ではありえないです。
それが100年にわたって続くという想定になっている。
大変おかしな想定だと言わざるを得ません。
名目経済成長を上回るような賃金上昇 、
どう考えてもおかしいような想定を優秀と言われる厚生労働省の官僚はどうして行なったのか?
実は財政検証結果レポートというレポートの片隅に書かれておりました。
テクニカルな話なので、詳細は省略いたしますが実質賃金上昇率
いうのをですね資本分配率等々のファクターで分解いたします。
それらは長期想定の中では固定値、変わらない値として想定されています。
唯一、毎年の人口にリンクいたします。
結果、労働減少率というのが変動要因になります。
すなわち労働が減れば減るほどですね、プラスの賃金上昇が得られる
という算式を、使っているということでございます。
短期的に見ればあり得るかもしれませんが長期に継続することは不可能。
今回の財政検証が、大変多くのかなりきわどいスキルを使って、
テクニックを使って作成されたというのがお分かりいただけたと思います。
さぞ結果は良いものが出てるんだろう いうふうに期待したいところですが、
結果はそうでもありません。
1から6までのシナリオごとの結果の概要です。
最終的な所得代替率のレンジというところを見てください。
シナリオの1から3については所得代替率の目標である5割を維持しております。
しかし
六つのシナリオのうち三つについては
所得代替率については
39.6、38.7、36.5 というような結果になっております。
現在の所得代替率は大体60%の中頃ですので、ほぼ半減する水準ということになります。
以上、大変厳しい数字でございますが最後の結果については、
私が作ったのではなく、
厚生労働省の責任ある官僚が作った数字ということになるんです。
それを元に私なりに公的年金の将来像をシミュレーションしてみました。
所得代替率についてはおそらく、厚生労働省は算出したと同じように、いや、さらに厳しくなって3割経度というふうになると想定しておいたほうがよさそうです。
年金だけじゃなくて他の社会保障もございます。
医療、介護、生活保護これらの財源を賄うために
年金はどちらかと言うと、豊かな人も利益を得る制度でございます。
社会保障制度との優先順位としまして医療、介護、生活保護が優先しますので、
どうしてもあとの方にもっていかれる。
さらに直近のコロナあるいはロシア・中国等の地政学リスクを考えますと
さらに厳しい結果も出てくると想定すべきだいうふうに思います。
以上は平均的な話でございますが、実は低年金者という影の問題がございます。
あまりクローズアップされることは少ないです
しかし低年金の方はさらにこれらのネガティブなインパクトが大変厳しく効いてくる。
と想定されます。
実は低年金の人はどうしても健康管理が行き届きませんので。
普通の人に比べると寿命が短いという悲しい事実がございます。
ですからそれらの方に税財源を使って年金の補填をするというのは十分、
社会政策としてもリーズナブルですし、
数理的にも十分に合理的というふうに思い ます。
さらに一番大切なのは
次の財政検証は2024年に作業スタートで、
それから2025年と2026年を使って行われるというふうに想定されます。
あまりにも遅い。
直近のコロナ禍、地政学リスクの状況少子化の進展度合いを考えると
緊急に財政検証のやり直しを行う必要がある。